フジテレビとトヨタ~「ビジネスと人権」から見て
トヨタと日本生命保険が真っ先にフジテレビへのスポンサー提供を降りた。そのスピード感に驚くと同時に、トヨタはさすがグローバル企業だと感心した。
グローバル企業が後進国の労働者を虐待したり超低賃金で働かせるとか、森林大伐採して環境破壊するなどの問題を起こせば、その製品の不買運動が起こされ取引停止、企業価値低下といった事態が発生する。そこから「ビジネスと人権」という考え方が出てきた。
2011年国連人権理事会は、「ビジネスと人権に関する指導原則」を全会一致で採択した。指導原則は、①国家の人権保護義務②企業の人権尊重責任③実効的救済へのアクセスの3本柱で構成されている。
国家の人権保護義務(①)は当然だが、企業にも人権を尊重する責任があるとするのが画期的だ。グローバル企業だけでなく、国内の中小企業を含むすべての企業に人権尊重責任が問われる(②)。しかも、被害者救済のための救済システムの整備が求められることが注目される(③)。企業活動を通じて侵害される人権を救済するために、一企業内部だけでなく、その取引先など関係者すべての人権を対象とするのが「ビジネスと人権」である。
そこでトヨタらは、取引先であるフジテレビにおける人権問題を自社の人権尊重責任として捉え、取引停止措置を講じた。ここで静観すれば、トヨタに対する人権尊重責任が追及され、トヨタ自動車ボイコットなどの事態にまで世界的に発展しかねない。それを危惧したトヨタの素早い行動であったと想像する。さすが世界の大企業である。
いまや、人権リスクに重点を置いた企業活動を展開しないと企業価値が下がるどころか存亡の危機にまで至るという経済システムに国際的になりつつある。そういう時代が到来している。
対照的なのが、フジテレビ。女性アナウンサーの人権侵害の訴えに対して、結果的には、週刊誌で騒がれるまで1年半も放置したことになる。当事者双方・関係者をきちんと調査して適切に対処するという姿勢がまるで見られない。「ビジネスと人権」(②企業の人権尊重責任、③救済アクセス)に対する思慮の欠如がスポンサーの相次ぐ撤退を招き、企業の存続危機まで招いている。まさに「ビジネスと人権」にかかわる典型例になってしまった。
ちなみに、③救済システムの要となるのが国家人権機関の設置である。日弁連は、来る2月26日12時、衆議院第二議員会館において、「ビジネスと人権」の観点から「政府から独立した人権機関」の意義を考える集会を開く。
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