『人間の証明』
角川書店前社長の角川歴彦氏が『人間の証明-勾留226日と私の生存権について-』(リトルモア)を出版した。
自らが逮捕・勾留された実体験を赤裸々に述べたものであるが、自らの刑事裁判の決着が付いていない段階で上梓されるケースは珍しい。
日本の刑事司法について、人質司法について、命をかけて告発し、刑事司法改革を求める強い決意が見える。「『人質司法』とは、捜査当局が否認や黙秘をする被疑者や被告人を長期間、身体拘束することで虚偽の自白を強要する日本の刑事司法の実態を指す。」と本書が述べている通りであり、人権侵害の際たるものである。
日本の刑事司法の前近代性について、その根本的欠陥が人質司法、代用監獄という取調べの構造にあることを、私自身長年出版やシンポなどで訴え続けてきた。本書には、アフリカの最高裁判事の「日本の刑事司法は中世」との発言が紹介されているが、これは私がジュネーブでの国連拷問禁止委員会日本審査を日弁連代表として傍聴したとき、その場で実際に聞いた発言である。その模様を、帰国して1週間後に私のブログに書いたところ、1日に52,000件のアクセスがあり、あっという間に世界中に広がった。
本書は今日的問題点をほぼ全面的に簡潔に記載している。ただ、国連人権理事会、国連条約機関から日本政府に対して繰り返し勧告されている国家人権機関の設置について触れられていないのが残念だ。政府から独立した国家人権機関が日本に設立されれば、人質司法の被害者救済や人権侵害の告発、人質司法を打破するための政策提言がたやすく得られるキーステーションとなる。ヨーロッパはもとより、韓国、フィリピンなど世界120ヵ国以上に設置されているにもかかわらず、日本でも2012年に人権委員会設置法案が国会提出されたにもかかわらず、未だ実現していない。
角川氏が「人質司法違憲訴訟」を起こすことを決めた心意気に心から賛同すると共に、日本の刑事司法改革のために共に奮闘することを誓いたい。
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