『歌われなかった海賊へ』
「1944年、ナチ体制下のドイツ、『究極の悪』に反抗した少年少女の物語」と銘打たれている。連合国軍が迫る中で、ドイツ市民がどのように考え、どのように行動したか。
昨年の本屋大賞を受賞した逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』の受賞第1作(早川書房)。
前作は独ソ戦の戦場が舞台であったが、本書は連合軍占領直前のドイツの田舎が舞台だ。
本書も、前作同様、劇画チックではらはらと先を急いて読み進めたくなる。
主人公や周りの人々、市民たちの様々な変化する思いが複合的、重層的に描かれ、人間の多様性が矛盾なく、いや矛盾に満ちた多様性の総和が見事に描かれている。
そこには、誰が悪くて、誰が良い、と二分することができない人々の生きざまがある。誰もが善人であるが、思想的な立場の違いが狂わせる…。
権力に従う多数の市民たち。連合軍支配前も、支配後も。日本の戦前、戦後を連想させる。
著者の勢いに圧倒される意欲作だ。
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