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2023年12月

2023年12月22日 (金)

『天路の旅人』

沢木耕太郎著の大型ノンフィクション「第二次大戦末期、中国大陸の奥深くまで『密偵』として潜入した日本人がいた」(新潮社)という触れ込みに惹かれて購読したのは今年初めであった。

でも未だにこの本を時々思い出す。何を思い出すかというと、内蒙古から中国大陸の奥深く、チベットからブータン、ネパール、インドまでの長い旅の中での、地元の貧しい人々との交流である。明日の食べ物さえどうなるかわからないのに、同じ境遇の見知らぬ旅人に分け与える人間の心の持ち様であった。

スパイ小説かと思って購入したのに、その期待は見事に裏切られた。むしろ、長い長い旅日記であり、そこに大した筋書きがあるわけではない。淡々と山歩きする姿であったり、お寺の坊さんたちとのさりげない日常であったりの連続である。

しかし、570頁に及ぶ長編を飽きないで一気に読まがせるのは著者の並々ならぬ筆力であろう。人間とは何なのか、思わず考え込んでしまう。そして、大陸の奥深くの雰囲気に浸るのである。年末になっても、その余韻が未だに残っている。

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