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2019年6月

2019年6月22日 (土)

ユゴー『死刑囚最後の日』

 

『レ・ミゼラブル』(1862年)のヴィクトル・ユゴーが、27歳になる直前の1829年に出版したのが『死刑囚最後の日』。日本では3度目の翻訳版が昨年暮に光文社古典新訳文庫になった。

初版は匿名で出版された。世間の反応が読めず、怖かったのであろう。案の定、賛否両論が渦巻いたようだ。その反応を踏まえて、ユゴーは、第3版(1832年)は実名で、対話形式の長いまえがきと長い序文を書き、堂々と死刑廃止論をストレートに展開した。本書にはその翻訳まで掲載されているから、興味深い。

1789年フランス革命からわずか40年後に出版されたのであるが、第3版まえがきと序文には、今日の死刑制度についての賛否両論がほとんど出尽くされていることに驚いた。200年前に議論されていることが未だにそのまま議論されているのだ。

ちなみに、18482月革命により第2共和政が成立し、政治犯の死刑が廃止された。ユゴーは議員となり、憲法制定議会で死刑廃止を訴える演説を行った。

200年経っても同じ議論をしているとは、200年経っても世の中変わらないのか。あるいは、200年というのはつい最近のことなのか。

もっとも、ヨーロッパでは前世紀末までに死刑が廃止され、米国でも、つい先月ニューハンプシャー州で死刑が廃止され、死刑廃止21州・停止4州となり、米国の州の半分の25州が死刑廃止・停止州となった。

しかるに日本では、相変わらず200年前と同じ議論がなされている。ところで、昨年のオウム死刑囚13名全員の処刑は世界を驚かせ、日本の死刑制度に対する内外の関心が高まっている。昨年死刑全面廃止を打ち出したローマ教皇が、今年11月来日する。日弁連は、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる来年までに死刑廃止の目途をつけることを宣言し、運動を展開している。この機会に、本書が多くの日本人に読まれることを期待したい。

 

 

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