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2017年6月 7日 (水)

共謀罪の対象は一般市民

共謀罪の対象は「組織的犯罪集団」といわれるが、条文上は組織的犯罪集団の一員でなくても、複数の個人が犯罪主体とされている。

条文の中に、「組織的犯罪集団」と銘打つ必然性もない。これまで3度廃案となった共謀罪法案は、単なる「団体」とされていた。「組織的犯罪集団」は枕詞に過ぎないから、そこに「テロリズム集団その他の」という枕詞を追加しても、条文の内容に何の変更もない。

法人税法違反について会社の経理部門が組織的犯罪集団と見なされ、それを計画した会社役員と経理担当者が法人税法違反共謀罪に問われる恐れがある。

スクープ報道の裏付けが弱ければ、組織的虚偽風説流布・偽計信用棄損・威力業務妨害罪などに問われ、その記者・編集者たちが組織的犯罪集団と見なされる恐れがある。それを企画した編集会議は、それらの共謀罪に問われる。その企画が団体のために計画したものであれば、これらの共謀罪に問われる恐れがある(法案6条の22項)。

もっとも、このようなケースが現在それほど犯罪に問われているわけではない。一見構成要件に該当するように見えても、実際は、どのような行為態様か、相手方の出方とそれに対する対抗手段、正当行為といえるかなど、「諸般の事情を考慮に入れて、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを判定し」(最高裁判決)、総合的判断がなされる。

 ところが、共謀罪は、実行前の計画段階で犯罪が成立するから、その計画がどの程度発展するか、計画者すらわからない。実際に比較衡量して社会通念上許されるか総合的判断することができない。

 つまり、今までは実行行為そのものが歯止めになっていたから犯罪に問われないが、共謀罪は実行行為前の計画段階だから歯止めがない。捜査側が違法とする恣意的認定がまかり通る恐れがある。

 いま手元に、沖縄基地反対運動体の「新基地建設の強行を阻止しよう」「ブロック投下を止めよう」というビラがある。法案が成立すると、実力で阻止行動に出るのか、実行行為がないのでわからない段階で、このビラだけで組織的威力業務妨害共謀罪に問われ得る。

 組織的犯罪集団を定義づけている諸外国のように、日本でも、本当に文字通りの組織的犯罪集団対策に限定するつもりがあるなら、破防法適用団体、指定暴力団、特定秘密保護法上のテロリズム定義規定のように、法文上限定することができる。「集団の組織者が○○罪の前科前歴がある集団」などと限定することもできる。にもかかわらず法案に全く限定がないのは、もともと限定するつもりがないからだ。277もの対象犯罪があり、その中にはテロとは無関係なものがたくさんあることは、ターゲットが一般市民に向けられていることを示している。

 諸外国には、警察をチェックする機関がある(ニュージーランドには警察の不祥事を取扱う別の警察組織がある)が、日本には、警察を監督する行政機関がない(公安委員会は有名無実となっている)。その日本の警察の恣意的認定に委ねるわけにはいかない。

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