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2016年5月 1日 (日)

今市事件が部分可視化法案の怖さを明らかにした

今月初めの今市事件判決は、取調べの録画がないところで自白を強要し、屈服させたところでビデオ録画し、それが証拠となって有罪の心証を左右するという、録画の怖さを示した。自白すれば死刑にしないと利益誘導されて、死刑にならないように想像力を働かせて、検事の前で身振り手振りで自白する。その場面が録画され、証拠採用される。
物的証拠からは認定できない、と判決も明言。裁判員は、録画がなければ分からなかった、結論が違ったかもしれない、と記者会見で語った。
映像の力は大きい。真実と思わせられるが、一部分だけ編集され、真実とは逆の印象を与える危険性があることを知れば、それが証拠として法廷に出される怖さがわかる。
連休明けにも強行採決されようとしている刑訴法改定案は、部分録画を容認し、部分録画の証拠採用を促進する。
弁護人抜きの取調べの録画で裁判が左右される。公判中心にしようとして始まった裁判員裁判が、公判ではなく、取調べの録画で左右される。真逆だ。それは近代刑事司法の崩壊になる。
国会審議で、次々と法案の問題点が暴露されている。
① 全過程録画と言うが、「落とす」ためにぎしぎし取調べるのが仕事である警察官がそんなところを録画するわけがない、と元警察幹部の原田さんが先日の参考人質疑で断言した。
同じ参考人質疑で豊崎さんが指摘したように、そもそもこのような落とし方がいいのかをまず検討するのが前提のはずだ。
② 録画しなければ供述するが、録画すれば供述しないという関係にある場合に、録画しなくていいという例外規定が当てはまる、と政府答弁するが、法案には、「録画しなければ供述する」関係にある場合とは何も書いていない。
③ 録画しなくていい場合という例外規定を捜査側が濫用しても、裁判所が適正に判断する、という政府答弁は、答弁になっていない。裁判所はそれほど信用できるのか。そもそも、濫用できないような法律を作らなければ欠陥法案である。
④ 2015年2月最高検依命通知は、ビデオ録画の実質証拠を検討しようと明記しているのに、政府答弁は、いいとこ撮りの録画を実質証拠とする意見ではない、と言うが、意味不明である。
⑤ 盗聴の濫用には警察の監督官を置いて対処するというが、同じ警察内部で監督できるわけがない、と原田さんは断言した。
⑥組織犯罪対策と銘打ちながら、法案には組織性の限定が全くない。
⑦ 司法取引は共犯関係を想定していると政府答弁するが、法案は共犯関係に全く限定していない。
等々。
政府答弁は、濫用の恐れを解釈で限定するとの答弁に終始しているが、条文からそのような解釈は出てこない。それは濫用の恐れがある欠陥法案であることを認めているに等しい。権力は必ず濫用するものである。濫用の恐れのない法案に作り変えないで、強行採決することは乱暴極まりない。

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