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2014年5月

2014年5月23日 (金)

袴田事件検察即時抗告と法制審の関係

本年327日静岡地裁は袴田事件再審開始決定した。捜査機関の証拠ねつ造の疑いまで指摘し、DNA鑑定などからほとんど無罪というに等しい明確な決定であった。死刑確定者の再審開始決定で釈放まで認めるのは前例がなく、完膚なきまでの決定であった。

あまりにも明白なえん罪事件だから、検察は最早即時抗告しないかもしれないとも思った。争いたければ、即時抗告しないで、再審の審理の中でやればいい。これが圧倒的世論であった。その方が検察にとっても得点になるだろうに…。

ところが、恥ずかしくも検察は即時抗告した。なぜ?

その時はわからなかったが、430日法制審特別部会で事務当局試案なるものが配布され、6月にもまとめられるという動きを見て、はたと気がついた。

 

法制審特別部会は、厚労省事件における検察の証拠ねつ造などを契機に設置された。そこでは、警察・検察の捜査・取調べの在り方に根本的なメスが入れられるはずであった。

ところが全くそうならず、取調べの録音録画は、供述(自白)がとれそうになければ実施しなくていいという逃げ道(例外規定)が作られている。

通信傍受(盗聴)の対象は、現行法は、薬物・銃器犯罪、集団密航、組織的殺人に限定されている。組織的殺人の組織性、団体性は、「指揮命令組織に基づき」「反復」「犯罪行為の実行組織により行われたとき」などと、何重もの組織犯罪の限定がなされている。

ところが、試案では、殺人一般だけでなく、傷害、詐欺、恐喝等までに対象が大幅に広げられている。しかもそこでは、「組織犯罪」の枠組みすら取り払われている。わずかに、「数人の共謀」、「役割の分担」「人の結合体」というキーワードがあるが、これで組織性、団体性の枠組みができているとは到底いえない。複数犯なら、組織犯罪でなくても、すべて盗聴対象になるといっていい。

これは盗聴法の対象犯罪の量的拡大だけでなく、質的拡大、圧倒的な拡大である。

要するに、数人で(2人でも)恐喝、詐欺といわれる恐れのあるようなことをしたとされれば、電話もメールも盗聴できてしまうことになる。

立法事実が、暴力団対策、振込み詐欺対策などと説明されながら、そのような組織犯罪どころか、あまりにも無限定で、市民生活への影響は底知れない。こんな立法がなされれば、盗聴は野放しに合法化されるという事態になりかねない。つい、昔の5人組時代を連想してしまう。

 

このような立法化が企てられている折りしも、袴田事件で無罪が確定し、警察の証拠ねつ造まで認定されれば、どうなるか。袴田事件には、代用監獄における長時間・長期間の自白強要、証拠隠しなど、日本の刑事司法の根本的欠陥が集約されている。挙句の果てに、検察だけでなく、警察まで証拠ねつ造などと騒がれると、捜査側にせっかくうまく運んでいた法制審が台無しになる恐れがあることに気づいたのであろうか。

袴田事件をできるだけ引き延ばすために即時抗告して、無罪確定という最終結論が出る前に、法制審での結論を出し、立法化しようというのであろうか。即時抗告はそのための時間稼ぎだったのではないか、という疑念がぬぐえないのである。

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