« 2013年6月 | トップページ | 2014年2月 »

2013年10月

2013年10月 3日 (木)

上田大使の退任に思う

 去る920日、上田人権人道担当大使が退任したという報道に接して、複雑な気持になった。

 私のブログがきっかけになって、大使の拷問禁止委員会日本政府報告書審査でのシャラップ発言が広く知られることになったようだから、可哀そうなことをしてしまったという思いがある。大使に対する個人的な恨みなど何もないからだ。

 しかし、世界が注目する国連の場で、20日間も代用監獄に勾留し、弁護人も立会わせないで取調べて自白を強要する日本のシステムについて、モーリシャス(アフリカ)の委員が、「あまりにも自白に頼り過ぎている…中世のようだ…日本の刑事手続を国際標準に合わせる必要がある」と指摘したことに対して、大使が真っ向から否定し、「日本は中世ではない。この分野では、世界で最も先進的な国の一つだ。それを誇りに思う。」とまで開き直ったのだから、苦笑するしかなかった。それに対する「なぜ笑う。笑うな。シャラップ(黙れ)!シャラップ!」という暴言が許されることではない。

日本人の参加者全員が、恐らく他の15人の日本政府代表団も含めて、恥ずかしい思いをしたであろう。大使は、これまでも、国際人権規約委員会や国連人権理事会などで日本政府を代表する立場で同様の場面に立ち会い、何が問題であるかを知っていたはずである。いや、このような発言をするとは、実は何もわかっていなかったのではないか。

 いずれにしろ、委員会の審議を真摯に受けとめて、日本に持ち帰ろうという発想がまるでなかったことだけは確かだ。

 それは外交官としては、失格であり、退任は当然であろう。問題はそれで済まされない。大使を任命した外務省の責任こそが重大だ。階議員(民主党)が、衆議院法務委員会で、大使に対する口頭での注意処分では足りないとして、厳重な処分を要求したが、外務省は何もしなかった。いや、暗に辞任を勧めたのかもしれないが、これで終わったのでは、外務省もやはり大使と同じ体質なのか、ということになるであろう。外務省は真摯に反省しなければならない。

 階議員は、いま日本の刑事司法を審議している真っ最中の法制審特別部会に拷問禁止委員会の勧告を配布するように要求したが、それが実行されたという話はきかない。

いま、法制審特別部会で最も重要なことは、拷問禁止委員会の勧告を全員に配布し、そこで勧告された、取調べへの弁護人の立会い、取調べ時間の規制、取調べの例外なき全面可視化の実現などに真剣に取り組むことである。今からでも遅くない。法制審特別部会は、この勧告を真摯に受けとめ、基本構想を一から見直して再出発することだ。

 来る108日(火)12時~1345分、衆議院第二議員会館において、アムネスティーインターナショナルなどの呼びかけ(日弁連共催)で、「これが“新時代”の取調べの可視化?~ガラパゴス化する日本の刑事司法~」と題する院内集会が開かれる。私が「国際社会からみた日本の刑事司法の問題」というテーマで基調報告し、その後、ジャーナリストの青木理さんらのパネルディスカッションが企画されている。

|

« 2013年6月 | トップページ | 2014年2月 »