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2013年6月 8日 (土)

「中世」発言から―とまどいのブログ後日談

 国連・拷問禁止委員会での日本政府報告書審査の模様を書いた私の529日付ブログ「日本の刑事司法は『中世』か」に、1日だけで52,000件ものアクセスがあった。大変なことになっている、と驚いた。以前、日本テレビのワイドショーでコメンテーターをしていたときは、視聴率10%で1000万人が見ていると言われ、オウム事件のときは20%を超えたこともあったが、特にあわてたことはなかった(拙著『ワイドショーに弁護士が出演する理由(わけ)』平凡社新書)のに…。ネットの怖さだろうか。とまどった。

 いちばん伝えたかったことは、日本の刑事司法は「中世」か、というキーワードだった。だからタイトルをそうしたのだが、それ以上に日本大使の「シャラップ」発言が注目を浴びたようだ。先日、東京新聞の取材を1時間ほど受け、その大半は刑事司法について語ったのだが、翌日の65日付朝刊は、「国連で日本政府代表『笑うな、黙れ』」の大見出しとなってしまった。

 その前日に発行された日刊ゲンダイは、大使の日本語使用を皮肉った記事になっていた。当初のブログに、「日本語で挨拶した大使」と書き(後に、修正)、これが、大使の挨拶全体が英語ではなく、日本語だったという印象を与えてしまったようだ。私は、日本語同時通訳のイヤホーンをしていたが、大使が日本語で挨拶したのか、英語だったのかに関心がなかった。「笑うな。シャラップ」発言の「笑うな」は日本語、「シャラップ」は英語そのままだったように思ったのだが、後で聞き返してみると、すべて英語だった。同時通訳のため、混乱したようだ。不正確な記述だったので、これが日刊ゲンダイの出所だったとすれば、申し訳ない。日刊ゲンダイから取材を受けていれば、この点を正す機会になったのに、残念だ。

 韓国の朝鮮日報にもこの委員会の模様が掲載されているようだ。

 私が最も言いたいことは、日本では、未だに、取調べへの弁護人の立会が実現していないことと、連日長時間にわたる取調べがいまも普通に行われていること。東電OL事件では、被告人と同居していた同じネパール人が2か月近く連日「任意」で取調べられた。午前3時まで取調べられ、その後午前7時から取調べが再開されたこともあった。私が最近担当した事件では、午後8時頃自首し逮捕され、徹夜で、仮眠することもなく朝まで取調べられた。異常だ。前近代的(まさに「中世」か)刑事司法といっても過言ではない。

世界の嘲笑を買っていることが、日本の官僚司法家にはわかっていない。日本で拘禁された外国人は、家族に電話もできないのか、とあきれている(数年前の広島刑務所逃亡事件は、中国の家族に電話したくて逃亡したと報じられている)。

「取調べに過度に依存した日本の刑事司法は時代の流れとかい離したものであり、根本から改める必要がある」(20113月検察の在り方検討会議提言)という反省から設置されたはずの法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」が、本年1月、中途半端な取調べの可視化と会話傍受などの新たな捜査手段の拡大をセットとする基本構想をまとめた。弁護人の立会は先送りされ、取調べ時間の規制については一言も触れられていない。何とも時代遅れな構想であり、マスコミがなぜ批判しないのか、不思議でならない。基本構想は撤回して、一から出直すべきだ(拙稿「えん罪原因の解明から刑事司法の根本的改革へ」日弁連えん罪原因究明第三者機関WG編著『えん罪原因を調査せよ』勁草書房所収)。

531日拷問禁止委員会は、日本政府に対して、1日の取調べ時間を規制し、取調べへの弁護人の立会いを実現せよと勧告した。法制審は、まずこの勧告を真摯に受けとめるところから再出発すべきだろう。

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