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2009年8月 8日 (土)

裁判員裁判 予想以上の好スタート

 裁判員裁判第1号事件が連日メディアで大きく報道された。

この事件の2人の弁護人も被害者代理人弁護士も私と同じ第二東京弁護士会の会員で、よく知っているので、はらはらしながらも、頑張れ、と応援していた。実際、彼らの活躍はマスコミ対応を含めて予想通りよく頑張った。

では、何が予想を超えていたかというと、判決後の記者会見である。補充裁判員を含めて全員が記者会見に応じたことが素晴らしい前例を作ってくれたと、感謝感激である。しかも、皆さん、自分の言葉で率直に語っており、かつ、やってみてやってよかった、気持が変わった、といった前向きな発言であった。その感想も具体的で、評議の雰囲気もわかった。

また、裁判員全員が法廷で質問し、その質問内容が的を得て、かつ、市民ならではの日常感覚に基づいていたことである。失礼ながら、出来過ぎだとさえ思ったくらいである。そのまま裁判員映画になってもおかしくない。

さらに予想を超えていたのは、補充裁判員の登場である。これは風邪のための交替というハプニングではあるが、補充裁判員というのが何のために要るのか、私たちも含めて実感したといえよう。最後まで補充裁判員のままであった方の記者会見もよかった。勉強になったという前向きの発言であった。

判決をみると、裁判員たちが、量刑相場を参考にしながらも、それにとらわれずに自分たちの頭で考えたように思われる。

相場から見ると、少し重いかなといわれるが、裁判員の1人が記者会見で、「刑期の長さはは正解がない。」と述べたように、時代と共に、また、地域によって異なる。

ヨーロッパに死刑はなく、フィンランドでは、無期刑が13~14年で仮釈放になるのが通常という。日本では、30年以上経たないと認められないのが今の実態であり、また認められるケースはわずかである。刑務所の中で死ぬ人の方が多い。つまり、事実上の終身刑に近い状態になっている。フィンランドの有期刑の最長は12年、2件以上の犯罪が合わさると15年という。スペインには、無期刑もなく、最も重い刑が有期刑20年で、複数刑などでどんなに加重されても40年までという。

日本でも、裁判員をはじめ国民が、仮釈放は満期寸前に認められるケースが大半であるという実態や、刑務所の実態、死刑の実態などを知る中で、刑のあり方について、よく考える環境ができるようになれば、変わってくるであろう。プロの裁判官たちが、量刑相場にとらわれて、しかも重罰化の世論に流されて来た昨今をみると、それよりも、当面は、刑の軽重についてジグザグがあっても、国民が法というものを、刑罰というものを良く学び、考える環境ができることによって、世論全体が変わっていくことを期待したい。

そのためには、マスコミにも期待したい。マスコミが一方的な報道をしないで、被告人の立場も公平に取上げ、複眼的な見方に立脚して報道するようになれば、世論も変わってくるだろう。今回の報道はその先陣を切ったと評価できる。冷静かつ建設的な報道であった。

裁判員裁判は、出来過ぎともいえる好スタートを切った。

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