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2009年7月

2009年7月23日 (木)

「世界」8月号・足利事件弁護団の論稿を読んで

「世界」8月号に足利事件の弁護人佐藤博史弁護士が書いている。

菅家さんが犯人ではない証拠は数多くあったという。それらが控訴審段階までに明らかにされていたにもかかわらず、DNA鑑定と自白に引き摺られて、有罪が確定した。

弁護団は、大学教授の鑑定書を添付してDNA再鑑定を強く求めたにもかかわらず、最高裁は、「最高裁は事実審ではない」という理由で上告棄却した。法医学鑑定を新たに得て再審を申立てた宇都宮地裁も、簡単に却下した。東京高裁でようやく再鑑定が実現し、再審が開始されることになったが、それまで長い年月を要した。

これらがプロの裁判官の下した結論だったのである。被告人・弁護団の真摯な訴えに耳を傾けようとしない官僚司法の欠陥が露呈しているといえよう。

足利事件はまた、やってなくても自白は簡単に取れるものだということを示した。しかも、公判廷でも、「傍聴席に刑事がいるんじゃないかとびくびくして」途中まで否認もできなかった。代用監獄で、長時間、長期間取調べられれば、誰でもこうなる恐れがある。この自白偏重の日本の歪んだ司法の改革は急務である。国連からも度々改革を迫られているのだ。

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2009年7月10日 (金)

「レンタルお姉さん」の記者会見

社会から孤立した引きこもり、ニートなどの若者たちを支援するNPO法人「ニュースタート事務局」が訪問スタッフの名称「レンタルお姉さん」をポルノ映画の題名に使われたことが不正競争防止法、商標法違反にあたるという理由で配給差止めの仮処分を一昨日午前東京地裁に申立てた。

「レンタルお姉さん、お兄さん」は、家族の依頼で、引きこもりなどの若者を訪問し、「家族を開く」ための粘り強いコミュニケーション努力を重ね、若者を社会に引き入れる活動をしている。

昨日午後2時から東京地裁の司法記者会で記者会見を開いた。私は代理人として、冒頭、仮処分の概要を説明し、代表者の二神氏と、レンタルお姉さん3人に思いを語ってもらった。そのうちの1人は、自ら引きこもりをしていた過去を語り、社会に復帰して会社勤めをしていたが、何とか社会貢献したいというおもいから、わざわざ高知から上京してこの活動に参加した体験を語った。

記者の質問も相次ぎ、会見は40分間も続いた。

一昨日夕方の日本テレビのニュースで取上げられ、昨日の朝刊各紙に取上げられた。朝日新聞にまで、社会面3段囲み記事で大きく取上げられたのには驚いた。予想を超えた反響であった。

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2009年7月 7日 (火)

二人の最高裁長官の「思想的対立」

昨日の朝日新聞朝刊Globe-6面は、「脱官僚か、プロの誇りか。裁判員制度の陰に、2人の最高裁長官の『思想的対立』があった」という刺激的な見出しで、注目した。陪審制導入に積極的であった矢口元最高裁長官と消極的であった竹崎現最高裁長官の「思想的対立」について記されていた。

「竹崎現最高裁長官は、今は裁判員制度を推進しているが、もともとは反対側だった。全く信用できない。」とは、ある新聞の社説記事を書いている論者の論評であった。

私も、裁判員法の立法化に当たって、最高裁が、裁判官3名、裁判員2名を執拗に主張し、日弁連が必死で巻き返して、裁判員を6名にしたたたかいの渦中にいたから、あの最高裁が、手のひらを返したように裁判員制度推進の旗振りをしている現状に、違和感を抱き続けていた。

制度が出来た以上、それを失敗させるわけには行かないし、失敗すればトップの責任になるから、今は、トップは推進側に回らざるを得ないのだろう、と解釈する以外に考えられなかった。

その見方は、この新聞記事を読んで、やはり大筋間違いではなかったと思った。しかしそれ以上に深い「思想的対立」があったことがわかった。

私が、日弁連で、巻き返しのために、石坂浩二主演の映画「裁判員~決めるのはあなた」の製作の中心で頑張っていたときの相手は、竹崎さんだったのか、と思った。

最高裁は今の日本の刑事司法を否定できっこないから、最高裁の裁判員制度推進PRにはあまり説得力がない。現状の刑事司法を根本的に批判し、裁判員制度を推進できるのは日弁連しかないので、日弁連独自のPRを遠慮なく展開すべきだと、私は、かねてから日弁連内で口を酸っぱくして訴え続けてきたのであった。

朝日の記事は、竹崎氏の思想の深いところを垣間見させてくれたような気がする。「竹崎自身は、日本の刑事裁判の抱える病巣にメスを入れるために、市民の司法参加が『使える』ことは認識していたようだ。」という箇所だ。たしかに、最高裁は、取調べの可視化に積極的だ。

しかし、竹崎氏は、本当に、「日本の刑事裁判の抱える病巣」を認識しているのか、それに「メスを入れ」たいと思っているのか。この記事にはそれ以上の説明がない。あえて突っ込んでいないのかもしれない。今後の最高裁の対応がそれを明らかにするだろう。

それにしても、山口進Globe副編集長は、よくここまで書いたものだ。ずっと以前からわかっていたこのネタを記事にするタイミングを図っていたものと思われる。

同じ日の夜、テレビ朝日が、痴漢冤罪事件のドキュメントを1時間放映した。現場の裁判所のどうしようもない司法官僚振りと、揺れ動く最高裁判決が対比され、的を射た作品だった。まさにタイムリーなドキュメントであった。

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